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はじめに:あなたのExcelにも、見えない爆弾「外字」が潜んでいませんか?
前回の記事では、AIに指示するだけでExcelの名簿が完成する様子をご紹介しました。今回はさらに一歩踏み込み、多くの企業が頭を悩ませる「外字(がいじ)」の問題に、我らがAIアシスタント「Gemini CLI + Excel-MCP」と共に挑みます。
外字とは、JIS規格などで定められていない、企業や個人が独自に作成した文字のことです。
これらは、
- システム移行時に文字化けする
- データベースで検索してもヒットしない
- 他のPCで表示できない
- なにより印刷できない
といった問題を引き起こす、まさに「見えない爆弾」です。手作業でのチェックは大変な時間と労力がかかりますが、もしAIがこの厄介な外字を簡単に見つけ出してくれるとしたら…?
準備編:AIに「外字入りの名簿」を作成させる
まずは実験台となる「外字入りのExcel名簿」をAIに作成してもらいました。今回は、あらかじめ用意しておいた外字サンプルをAIに渡し、これらを使って名簿を作るよう指示します。


新規のエクセルシートを作成して今抽出してもらった外字をいくつかランダムで使用して架空の名簿を作ってください。A列のA1に氏名というタイトルとし、A2より30行架空の名前を作成して下さい。外字は3件使用してください。
承知いたしました。新規に架空名簿.xlsxというファイルを作成し、名簿シートに外字を3つ含む30名分の架空の名簿を作成します。
✔ create_workbook (excel-server MCP Server) {“filepath”:”C:\…\架空名簿.xlsx”}
…
✔ write_data_to_excel (excel-server MCP Server) {“filepath”:”C:\…\架空名簿.xlsx”, …}
架空名簿.xlsxの名簿シートに、ご指定の通り架空の名簿を作成しました。ご確認ください。


上手のように、AIは外字を文字として正しく認識し、指示通りにファイルを作成してくれました。まずは準備完了です。
実践編:AIに「外字発見」を指示する!
いよいよ本番です。先ほど作成した「外字入り名簿」を使い、今度は発見した外字のリストを報告させるのではなく、「外字を含む行に、直接目印(フラグ)を立てる」という、より実用的な操作をAIに指示してみます。
こうすることで、後からExcelのフィルター機能で「外字」フラグのある行だけを抽出し、修正や確認作業を効率的に行えるようになります。


続いて外字があるかを確認するフラグを用意します。B1に外字というタイトルを入力して、B2からA列に外字があったら「外字」と入力してない場合は何も入力しないで保存してください。
承知いたしました。B1に「外字」というタイトルを追加し、A列の氏名に外字が含まれている場合にB列に「外字」と入力します。
✔ write_data_to_excel (excel-server MCP Server) {“data”:[[“外字”]],”start_cell”:”B1″, …}
✔ write_data_to_excel (excel-server MCP Server) {“data”:[[“外字”],[“外字”],[“外字”],[“”],[“”],[“”], …], “start_cell”:”B2″, …}
外字フラグの列を追加し、外字が含まれる行に「外字」と入力しました。ご確認ください。


結果はご覧の通りです。AIは私たちの指示を完璧に理解し、以下の処理をすべて自動で実行しました。
- A列のデータを一行ずつ読み取る
- 各氏名に「外字」が含まれているかを判定する
- 判定結果に基づき、B列に対応するフラグ(「外字」または空白)を立てる
- B列のヘッダー(B1セル)に「外字」と入力する
これら一連のワークフローを、たった一回の自然言語による指示で完結させたのです。
なぜこれが凄いのか? AIによるデータクレンジング革命
今回の実験で、AIは単なる作業代行だけでなく、より高度な「業務プロセスの実行」まで行えることが証明されました。
- ワークフローを直接実行: 「リストアップして報告」というレベルではなく、「条件に応じてExcelファイルを直接編集・更新する」という、より実践的なデータ処理が可能になりました。
- プログラミング不要の条件分岐: IF関数やVBAマクロを使わなければ実現できなかった「もし○○だったら××する」という条件分岐を、日常会話の言葉で実現しています。
- 作業の標準化と効率化: このプロンプトを保存しておけば、誰でも同じ品質で、何度でも瞬時に外字チェックを実行できます。フィルターをかければ、修正対象が一目瞭然です。
- 応用への期待: 今回は「外字」でしたが、例えば「特定のキーワードを含む行にフラグを立てる」「郵便番号の桁数が違うものをチェックする」など、様々なデータクレンジングに応用が可能です。
おわりに:AIは、データ分析の「民主化」を加速する
今回は、システムの安定稼働やデータ品質の維持において非常に重要な「外字発見」というテーマに、より踏み込んだ形で挑戦しました。
AIに「外字を含む行にフラグを立てて」と指示するだけで、面倒なデータクレンジング作業が完了する。これは、これまで専門的な知識やスキルが必要だった高度なデータ処理が、誰もが扱えるようになる「データ分析の民主化」の始まりと言えるでしょう。
AIアシスタント「Gemini CLI + Excel-MCP」は、私たちの業務における「面倒なこと」「難しいこと」を肩代わりし、私たち人間がより創造的で本質的な課題に取り組む時間を生み出してくれます。
あなたの会社にも、眠っているかもしれない「外字」という名の爆弾。AIと共に、スマートに処理してみてはいかがでしょうか。